「ストレスに柴胡剤、という思い込み」
- kampo-kojyudo
- 3月27日
- 読了時間: 3分
更新日:8月12日
「一日中、動悸と息苦しさがあって胸が何ともいえず不快。仕事を任されたりストレスがかかると悪くなる…」40代、女性のご相談です。

このようにストレスで症状が悪化すると聞くと、まずは柴胡剤を思い浮かべる漢方の先生は多いのかと。
私も数年前まではそうでした。大学を卒業して初めて漢方の世界に入った頃、いろいろな漢方入門書や概論書をよんで勉強会にもたくさん参加していました。
そこでは「ストレスで悪化するなら柴胡剤」というのが当たりまえの世界で、それ以外は間違え。
どんな分野でも同じと思いますが、初めて何かを勉強する時は、まず一般的な知識を広く浅く頭にたたき込んで分野の全体像を把握する。その後、細部の分からないところを詰めていく、というやり方が多いのかと。
これは正しい方法ではあるのですが、そこから次のステップへ一歩を踏み出せるかどうかが漢方治療の勝負どころだと思います。
本の知識だけではなく、実際の現場で使ってみて効果があったかどうかの検証が最も大切で、もし上手くいかなかった場合はそれは何故か…
そういった自問自答、試行錯誤しながら、実際の生薬や処方の使い方を体得していく。
このような実学の大切さに気づかせてもらったのは、今参加しているレッスン(勉強会)のお陰です。
先生や学友に感謝の気持ちでいっぱいです。
さて上記の症例に戻りますが、この方は今まで仕事が忙しくなると動悸が激しくなるため、メンタルクリニックへ通い休職していました。
復職したところ、動悸と息苦しさ、胸の不快感など体調不良が再発したため、今度はなるべく自然な薬で改善したいという思いで漢方相談へ。
まず感じたことは、小さなお子さんを育てながら平日フルで仕事をされていて、心身ともに疲れ切っている印象。
動作や口調に力がなく、症状は動くと悪化して休むと良くなる。
ストレスでも動悸は悪化しますが、人前にでたり緊張したりすればドキドキするのは当然。それが柴胡剤を必要とするほどの緊張感があるかどうかですが、この方からは緊張というより疲労感を強く感じました。
「虚労」という病態とらえて漢方薬をまず数日分お渡ししたところ、美味しくて体が楽な感じがするとのこと。
この方向性で2週間ごとに様子をみていったところ、1か月後には動悸と息苦しさが治まって体調は良好。
仕事で緊張したりストレスがかかっても、動悸が気にならなくなったと清々しい表情で話してくれました。
結果から考察してみると、今回の動悸は「心中悸して煩す」「虚労」によるもの。
これは漢方の聖典といわれる金匱要略、血痺虚労篇にある病症。
柴胡剤が適応するのであれば、疲労よりも胸脇やお腹辺りに硬さ、痛み、張りなどの緊張感がみられるはずです。
"ストレス”という言葉にひっぱられずに、人の体の状態を正確に把握するためには、実学を追及していくことではないかと感じる今日このごろ…




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