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「10代20代の生理痛/よく使う漢方薬について」
更新日:10月14日
「生理痛が強くなってきていて、生理初日と2日目はお腹と腰がとにかく痛いです。鎮痛剤を飲めば痛みは治まりますが、他に頭痛もあるので1クールの生理で5~7錠飲むことに。他に低用量ピルを飲む方法もあるけれど、なるべく使わずに改善できたらと思って…」16才、高校生のご相談です。

このような10~20代の激しい生理痛のご相談が最近ふえています。今まで市販の鎮痛剤を使ったり、低用量ピルを使ってみて、より体の本質的なところから生理痛を改善したいと考えるためのようです。
コラム「10代、20代の生理痛」にもある通り、若い方の生理痛は子宮の過度な収縮によるものです。そのため子宮の収縮を緩めることで痛みが和らぎ、血流が安定します。ここで大切なことは、なぜ子宮が過剰に収縮してくるのか、根本的な原因を探ること。10代の子宮はまだ成熟過程で未発達であったり、20代は生活環境の変化やストレスでホルモンバランスが乱れやすい年代でもあります。さらに冷えや胃腸の弱さが加わることがあるので、個々の体の特性をみながら子宮の過剰な収縮を和らげる方剤の選択が必要になります。
生理痛に使われるる漢方薬にはいろいろありますが、今回は汎用される方剤をできるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
☆当帰芍薬散(というきしゃくやくさん)
生理痛は下腹部から腰まで引きつるような痛みと重だるさがある。体は冷えやすく水をため込みやすいため、生理前後は特に浮腫みやすく体が重たい。さらに水で血が薄まるため貧血様症状を伴うことが多い。当帰、芍薬、川キュウで血を補い、茯苓、朮、沢瀉で水の代謝を促す。生理痛には甘草を加えることで更に効果が上がる。また胃腸が弱い場合は食後に服用するか、先ずは胃腸を立て直すことを優先的に考える。
☆桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
東洋医学で瘀血(おけつ)、という血流が滞りやすい病態に使われる。生理痛はチクチクするようなギューっと絞られるような激しい痛み。このタイプの特長は生理の出血時にドロッとした塊が一緒にでて、塊がでると生理痛も和らぐ。胃腸や体格は比較的しっかりしていて、クマやアザができやすい、頭痛、肩こりなどがあることが多い。この処方も甘草を加えることで、痛みをさらに緩和できる。
☆逍遙散(しょうようさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)
ストレスや緊張が生理痛に影響を与える。例えば、試験や発表などでストレスがかかると生理痛がひどくなったり、環境が変わった後から痛みが激しくなる傾向がある。さらに特徴として、生理前の緊張感が強い。月経前症候群(PMS)として肩がこる、胸がはる、ガスが溜まりやすい、便が出にくい、イライラうつうつ情緒不安定、そして生理がくるとこれらの症状がすっと楽になる。
これらの症状に加えて、生理前に顔がほてる、イライラして家族に当たってしまう、赤いニキビができるなど、上部の炎症や熱感が強い場合には、牡丹皮、山梔子を加えた加味逍遥散を使う。
☆当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
生理になるとギューっと引きつるような痛みがあり、お腹を温めると痛みが少し和らぐ。PMSや血塊はほとんどないが、普段から手足が冷えやすく、胃腸が弱く、腹痛下痢を起こしやすい。子宮が成熟しきらない10代の生理痛に使われることが多い。
以上のように漢方薬は、症状と体の性質によって適応する方剤が変わってきます。さらに一工夫することで、効果がグンと良くなることもあります。
10代、20代は生体の反応がよく、薬の効果が速やかに現れやすいため、漢方薬を使ってみる価値は高いと感じます。また若い頃から体や子宮内の環境を整えておくことで、30代、40代に待つ妊娠、出産への準備にもつながります。今から漢方薬を、お勧めします!
参考コラム:「10代20代の月経過多」、「10代20代の生理痛」