「ひどくはないのですが排尿痛、頻尿、残尿感があったりなかったりを繰りかえす。数年前から時々あった症状ですが、最近は治りが悪くなって1か月くらい続くことも…」60代女性のご相談です。
以前のブログ「スッキリしない膀胱炎」にある通り、膀胱炎の主な病態は膀胱での水熱互結(湿熱)です。水(湿)と熱が膀胱で結びついているため炎症が起きているのですが、ここでの炎症は強くないため、症状には激しさがありません。わずかな炎症が続く場合には、熱を冷ます生薬の中でも竜胆、猪苓、黄連など強い清熱薬ではなく、山梔子、黄ゴン、滑石などを茯苓、沢瀉、車前子などの利水薬と一緒に使う方がより効果的です。
膀胱炎の漢方薬はたくさんありますが、今回はその中でも、何となくスッキリしない膀胱炎様症状に使える漢方薬について解説していきます。
☆五淋散(ごりんさん)
わずかな排尿痛、下腹部痛、うっすら尿が赤いなど弱い炎症と、明らかな痛みや尿赤を繰り返すような時に汎用される。山梔子、黄ゴン、滑石で炎症を鎮め、茯苓、沢瀉、車前子で尿の排泄を促す。基本的に熱を尿から排泄していく手法。さらに芍薬、甘草は下腹部痛、当帰は下腹部の冷え、地黄は出血を治めるため、膀胱炎様症状全般を網羅した処方といえる。服用する上での注意点として当帰、地黄が胃に負担になることがあるため、胃腸の弱い方は食後に服用するか、除いたものを服用された方がよい。
☆猪苓湯合四物湯(ちょれいとうごうしもつとう)
漢方処方で膀胱炎のファーストチョイスとされる猪苓湯に四物湯(当帰、芍薬、川キュウ、地黄)を加えたもの。五淋散と処方構成は似ているが、猪苓という膀胱の熱を冷ます生薬が主となるため、より頻尿、残尿感、尿赤が明らかにある。その他の症状として、口の乾きがあるのが特徴となる。この口乾はたくさん水分を飲みたいというより、水分を少し口に含みたい程度の渇き。さらに阿膠を含むため出血にも対応できる。
一般的な効能書きに、膀胱炎が慢性化したり反復した状態に四物湯を加えるとあるものが多いが慢性化したら合四物湯と安易に考えない方がよい。四物湯は骨盤内の血行を促すため、下腹部が冷えやすい、冷えると症状が悪化する、または下腹部にカイロを張ったり温めると楽になる場合には四物湯を加えてみる。上記にもある通り、胃腸の弱りがある時には食後服用か四物湯は除く。
☆清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
尿がすっきり出ない、残尿感があって気持ち悪い、尿が漏れる等の症状とともに、気持ちが落ちつかない、イライラする、眠れない等の気分の高ぶりや興奮状態に適用する。さらに人参、茯苓、甘草が胃腸の働きを改善するため、普段から胃腸が弱く、上記2処方を飲むのと胃腸障害がある場合にも使うことができる。
☆当帰芍薬(とうきしゃくやくさん)
普段から体が冷えやすく、特に足や下半身が冷えると膀胱炎様症状になりやすい場合に適応する。当帰、芍薬、川キュウで骨盤内の血流を良くして、茯苓、朮、沢瀉で水の代謝を促す。下腹部痛が激しい時には甘草を加えると鎮痛効果が高まる。当帰が胃腸に負担になる時には、食後に服用してみる。
☆当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
普段から冷えやすく、胃腸が弱く、疲れやすいタイプで、これらを強く感じた時に膀胱炎様症状が悪化するような場合に適応する。さらに特長として下腹部痛、下腹部の冷えが症状として顕著にみられることが多い。
簡単な説明ですが以上となります。膀胱炎様症状で相談にみえる方のほとんどが慢性化していて、何となく不快な症状がつづいている、くり返しているという方達です。こんな時こそ漢方薬の出番だと思いますので、お近くの漢方専門の医療機関へ相談されてみて下さいね~
参考コラム:「スッキリしない膀胱炎」
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