「夏の終わりから手のひら、うで、肘内側の皮ふが乾燥してカサカサになると同時に、痒みが強くなるのが辛いです。日中はどうにか我慢できるのですが、夜中に無意識に搔いてしまうので寝具が血まみれになることも。秋から冬は毎年悪化するので、今年こそ乾燥と痒みをどうにかしたいと思って…」30才女性のご相談です。
このように秋から冬にかけて皮ふの乾燥、痒みが悪化する方は多いです。元々アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が低下しているため、皮膚表面が乾きやすく、異物(紫外線、ホコリ、花粉、細菌)に過剰に反応するため炎症が起こりやすい状態になります。そのため保湿剤を使って表皮を保護していきますが、小まめに塗っても皮膚はガサガサで硬くなり、白く粉をふいたり地割れのようにひび割れたり出血したりもします。
このような乾燥と痒みを、漢方薬でどのように改善していくのでしょうか?
一つには体の内側から皮膚を潤す、滋養する。漢方では当帰、芍薬、川芎、地黄から構成される四物湯という処方を内包する方剤が使われることが多くあります。たとえば温清飲、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、当帰飲子。これらは四物湯で皮膚を滋養して血行を促しつつ、熱を冷ましたり痒みを止める生薬から構成されていて、一般的に治りにくい慢性の皮膚炎に汎用されます。ここで大切なのは、熱感や赤み等の炎症の強さと乾燥の程度をきちんと把握すること。このバランスが病態に合わないと悪化する可能性があるため、皮膚をきちんと診て生薬を調整することが大切なポイントとなります。
二つめに、体の過剰な熱を取りのぞくことで乾燥を防ぐ。これは病巣の熱の勢いが激しいために水が蒸発して皮膚が乾いてしまう、熱盛傷津という病態になります。白虎湯、白虎加人参湯、黄連解毒湯加石膏などが一般的に使われる方剤です。
アトピー性皮膚炎の難しいところは、皮膚の表面が乾いていてもその下に湿(水)が隠れていることが多いので、皮膚の表面だけみていると見誤ることがあります。
大切なことなので繰り返しになりますが、一年を通してどんな時に悪化しやすいのか、さらに乾燥、痒み、赤みの強さをきちんと把握して漢方薬を選び、状態をみながら調整していくことが最も重要になります。少し根気が入りますが、このやりとりを繰り返していくうちに皮膚はスッときれいになります。諦めず、信頼できる先生と共に、がんばりましょう!
参考コラム:「アトピー性皮膚炎/ポロポロと薄皮がむける」
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