「数年前から生理2日目に大量出血するので困っています。昼間に夜用ナプキンを使っていてもトイレに行くタイミングが遅れると漏れ出ているので、気が気ではないのです。それと大量出血した後は貧血っぽくなり、立ちくらみ、眩暈、動悸もして、とにかく体がだるい…」

このような過多月経は30~40代の女性に多く、その原因はいろいろと考えられます。漢方治療をはじめたいといらした方には、まず婦人科の受診をお願いしています。過多月経では、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、チョコレート嚢胞などの可能性が考えられ、早急な外科治療が必要な場合があるためです。その場合は婦人科治療と並行して漢方薬を服用していく方法や、術後の再発予防で漢方薬を使っていくこともできます。もちろん子宮に器質的な異常のない方は、漢方薬をお使いいただくのが最良と思います。
病名は異なっていても、東洋医学的な体の見方(弁証)は同じです。
なぜ生理出血が多くなるのか、を漢方の目でみてみると、大きく分けて2つの病態が考えられます。一つに子宮内の血流が滞っている“瘀血(おけつ)”、もう一つには血に熱を帯びている“血熱(けつねつ)”です。
瘀血には純粋な瘀血と、気の滞りをともなった気滞瘀血などがあるので処方は一つではありませんが、一般的に桂枝茯苓丸が使われます。瘀血のある方の特徴として、生理痛がある、出血にレバー状の塊がある、出血の色が暗紫色、静脈瘤、アザやクマやシミができやすい、舌に暗紫の斑点があるなどです。
血熱には赤芍、牡丹皮、山梔子などの生薬を使っていきます。代表処方としては加味逍遥散。血熱のある方の特徴としては、出血は鮮紅色、カーっとのぼせやすい、イライラする、不眠などです。
また大量出血した後の貧血症状についてですが、血の不足=血虚=四物湯と考えられ、上記の処方にプラスされて処方されることが多いですが、貧血症状は血の不足ではなく、気の不足になります。症状によりますが、茯苓、白朮、桂枝などが使えます。ただ、貧血様症状は出血が少なくなると自ずと改善されますので、まずは出血を主眼にしていいと思います。
今回は一般的な病態として瘀血と血熱の2つを挙げましたが、十人の体があるならば10人とも違う体の状態になります。病態は似ていても、そこに至る背景は一人ひとり異なる。その方の表面にみえている症状と体の内側にある病態、この両方をきちんと捉えることができれば、漢方薬で過多月経はよくなるはずです!
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