「デスクワークのためか夕方になると足が浮腫んでパンパンに、朝は顔や瞼そして手も腫れぼったくなって人に見せられない…」40代女性のご相談です。
このように体に吸収されない水がある部分に溜まり、外に張り出してしまう状態が浮腫みです。すなわち、水の代謝異常による産物です。
前回のコラム「浮腫み/生活で気をつけたいこと」にも書きましたが、浮腫んだ水の特長は“重い、だるい、下に溜まる、そして時に冷たい”。
圧倒的に女性に多くみられますが、特に長時間同じ姿勢で仕事をしたり、冷房が強く寒い環境での仕事をされている方に多くみられます。
また2~3ℓ/日以上の水を頑張って飲むようにしているという方、またお茶やコーヒーが好きで何かを飲んでいるという方は、ぜひ前回のコラムも参考にご覧下さい。
では今回は浮腫みによく使う漢方薬について、それぞれのポイントをなるべく分かりやすくご説明していきます。
☆五苓散(ごれいさん)
体に停滞した水を茯苓、蒼朮、沢瀉、猪苓で調整し、桂皮で水の代謝を促していく構成になっている。五苓散の大切なポイントは、口の渇き、そして尿がでにくいこと。
胃の粘膜が乾いてるため口渇があるため水分を欲して飲むが、内臓の粘膜や細胞でうまく吸収できず間質(内臓と皮膚の間)に水が溜まるために様々な不調が起こる。
浮腫みは顔、手足など全身いたるところがパンパンに張る。気圧の変化で頭痛、頭重、めまい、倦怠感が現れやすい。
☆苓桂朮甘湯(りょうけいじゅっかんとう)
五苓散と同様に体内の水の調整をし、余分な水を尿から排泄する。五苓散との違いは、水の停滞している場所が全身でなく胃に限局していること。そのため胃にチャポチャポ音がすることがある(胃内停水)。また五苓散のような口渇はない。
浮腫みは他覚的にひどくはなく、自覚的に足が張ってつらいと感じる。
他に普段から頭痛、めまい、動悸、胃の辺りの不快感があり、気圧変化でこれらの症状が悪化しやすい傾向がある。
☆桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
東洋医学で瘀血(おけつ)という血流が滞りやすい病態に使われる。血にも水が含まれるため、血流が悪くなると同時に浮腫みも出やすくなる。浮腫みは生理前に強く、生理の出血が始まると落ちつく傾向がある。胃腸や体格は比較的しっかりしていて、クマやアザ、静脈瘤、頭痛、肩こりなどがあることも。
☆防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)
風水といって突発的な浮腫みにも使われるが、普段から足が浮腫む、疲れる、体が重い、動くとすぐに汗をかく等に汎用される。上記3つに比べると、皮膚に弾力や張りのない浮腫み(虚腫)で、膝痛を併発しやすい特徴がある。
☆当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
茯苓、朮、沢瀉で水の代謝を促しながら、当帰、芍薬、川芎で腹部の血流を改善していく方意となっている。体に水を溜め込みそれが冷えるため、お腹周りや下半身の浮腫みとともに冷たいと感じ、腹巻やカイロで温めると楽になるのが特徴。さらに過剰にたまる水で血の動きが悪くなるため、貧血様症状や生理遅延、生理痛を伴うことがある。
生理痛には甘草を加えることで効果が高まることも。食前に服用すると食欲が無くなったり胃の不快感が出る時は食後に服用するか、先ずは胃腸を立て直す方剤を優先に考える。
☆真武湯(しんぶとう)
少陰病といって体の陽気(元気、温める力)が衰えた状態に加え、水の滞りが顕著にある時に使われる。特徴は虚腫のため浮腫みに弾力や張りはなく、顔はポッチャリして手足が重だるく腫れぼったい、冷える、横になると楽になる等。その他、めまい、動悸、腹痛、下痢なども起こりやすい。
以上ですが、これらの他に防風通聖散、牛車腎気丸も浮腫みに汎用されます。ただ実際の臨床で効果のみられることが少ないため今回は省きました。
ご質問などあれば、お気軽にお尋ね下さい~_(._.)_
参考コラム:「浮腫み/生活で気をつける」、「浮腫み/症例」
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