「毎年、暑くなって大量に汗をかく頃になると、首や脇の辺りに湿疹ができてかゆくなるんです。特に夜中は無意識のうちに搔いてしまって、朝起きてその傷跡をみて自己嫌悪に。せっかく良くなっていたのに何てことを!扇風機やアイスノンで患部を冷やすと痒みは少し落ちつきますが一時しのぎ。この暑さと痒み、どうにかならないでしょうか?」
20代男性、アトピー性皮膚炎のご相談です。
まず初めに「暑くなると皮ふの炎症や痒みが悪化する」ということは、この湿疹は熱の性質があると考えられます。アトピー性皮膚炎などのくり返す炎症には、熱+湿という病態をとることが多く、赤みや浸出液の多い湿疹が、首や肘、膝の屈折部に好発します。この湿熱の病態を考える上で、温病理論(温熱性の急性疾患)を応用する方法がありますが、これは病理がどこにがあるのか(上焦→中焦→下焦)、どの段階にあるのか(衛→気→営→血)を見極めることが大切になります。
この方のような熱感が強い湿疹は、一般的に黄連、石膏などの強力な清熱薬を使うことが多いですが、これらを使っても治まらないケースもあります。さらに黄連、石膏を内包する方剤に、黄連解毒湯、白虎湯、白虎加人参湯がありますが、これらを長期連用すると胃腸障害を引き起こすこともがあるため注意が必要ともいえます。
結局この方は、冷たい飲み物を大量に飲む(喜冷飲)、汗が多い(多汗)、尿自利、より上焦の気分熱盛と考え投薬したところ、首周りなどの湿疹、夜中の痒みが落ちつきました。今は汗をかいても湿疹は悪化していません。
皮膚病で大事なこと…
「皮ふの表面だけを見るのではなく、皮一枚下で何が起こっているのかを考えよ」
恩師からの言葉です。
この教えを胸にしっかり刻み、これからも皮膚疾患でお悩みの方の力になれればと思っております。
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